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『学問の自由と大学の危機』(岩波ブックレット)が刊行されました

  • 単行本(ソフトカバー): 72ページ

  • 出版社: 岩波書店 (2016/2/6)

  • 定価(本体 580円 + 税)

  • ISBN-10: 4002709388

  • ISBN-13: 978-4002709383

  • 発売日: 2016/2/6


 

 

2015年6月16日,国立大学長会議であいさつに立った下村博文文部科学大臣(当時)は,国立大学の学長たちに向かって,「入学式・卒業式における国旗・国歌の取り扱いについて,適切にご判断いただけるようお願いする」と述べました.公的な場で,文部科学大臣が「要請」をしたわけです.多くのメディアがこの出来事を大きく報道したので,目にした人も多かったでしょう.

教育学者の私は,政治学,憲法学などの知り合いと相談して,この問題が動き始めた2015年4月に「学問の自由を考える会」を立ち上げました.会ではまず,この問題に対して危惧を表明する声明を作り,いろんな分野の33人の方に呼びかけ人になってもらい,4月28日に記者会見をやって声明を発表しました.そして,その声明への賛同者をウェブ上で募る,という形でこの問題を広く知ってもらう運動を始めました.5月の末までに賛同者が3000人を超えたので,私たちはそれに後押しされて,6月5日に文部科学省に要望書を提出しに行きました.

 

この問題に取り組んできた私たちには,もう一つ大きな課題が残っていました.そもそも大衆化やグローバル化が進む現代の大学において「学問の自由」をどう考えたらよいのか,という問題をきちんと考えてみるという課題です.私たちは研究者らしく,シンポジウムを開催して,「学問の自由」という主題を学問的に掘り下げてみることにしました.

シンポジウムは,「学問の自由をめぐる危機――国旗国歌の政府「要請」について考える」という主題で,7月4日に東京大学法文一号館25番教室において,約500人の参加者を得て開催されました.

 

本書はこのシンポジウムの成果です.第1章から第3章までは,このシンポジウムでの石川健治・橋本伸也・山口二郎の三氏の報告をほぼそのまま収録しました.また,本書の第4章では,今回の問題の性格を私が教育学者の立場から考察しつつ,シンポ当日の議論で出た論点を簡潔に紹介しました.本書が今後の議論の足場の一つになることを願っています.

 

著者を代表して   広田照幸

(「はじめに」より)

 

 

 

 

 

 

 

広田照幸(ひろた・てるゆき)

 

1959年生まれ.日本大学文理学部教授.専攻は教育社会学.著書に『陸軍将校の教育社会史――立身出世と天皇制』(世織書房),『教育は何をなすべきか――能力・職業・市民』(岩波書店)など.

 

 

石川健治(いしかわ・けんじ)

 

1962年生まれ.東京大学法学部教授.専攻は憲法学.著書に『自由と特権の距離――カール・シュミット「制度体保障」論・再考』(日本評論社),『学問/政治/憲法――連環と緊張』(共著,岩波書店)など.

 

 

橋本伸也(はしもと・のぶや)

 

1959年生まれ.関西学院大学文学部教授.専攻は西洋史学.著書に『エカテリーナの夢 ソフィアの旅――帝制期ロシア女子教育の社会史』(ミネルヴァ書房),『帝国・身分・学校――帝制期ロシアにおける教育の社会文化史』(名古屋大学出版会)など.

 

 

山口二郎(やまぐち・じろう)

 

1958年生まれ.法政大学法学部教授.専攻は政治学.著書に『いまを生きるための政治学』(岩波現代全書),『徹底討論 日本の政治を変える これまでとこれから』(共著,同上)など.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はじめに

 

第1章 天皇機関説事件80周年

――学問の自由と大学の自治の関係について

石川健治

 

第2章 大学と国家

――ヨーロッパ大学史に見る悩ましい関係

橋本伸也

 

第3章 民主主義と学問の自由

山口二郎

 

第4章 学問の自由の危機

――自由な社会のために

広田照幸

著者からのメッセージ
著者プロフィール
目次

昨年7月に東京大学で開催された公開シンポジウム「学問の自由をめぐる危機―国旗国歌の政府「要請」について考える―」の記録が、岩波書店からブックレットとして刊行されました。シンポジウムの登壇者3人の報告と、広田照幸代表による問題の整理で構成されています。どうか書店等でお手にとっていただきますよう、お願いいたします。

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